【Virtual Wind Symphonyの設立にあたって~「生涯学習」と「音楽活動」を考える~

1999(平成11)年当時に発行の「楽団概要(HandBook)」より原文のまま掲載しています。

 現代、週休2日制の普及による余暇の増大や、国民の文化に対する関心の深まりにより、「生涯学習」の必要性がわが国でもとかく叫ばれています。

 「生涯学習」の考え方は、1965年にパリで行われたユネスコの第4回国際成人教育会議において採択された「学習権」宣言でその必要性が叫ばれ、このことが、「生涯学習」の考え方の重要な一歩となりました。

 日本でも、この動きを受け1990年に従来の「社会教育」の概念をより広義にとらえ、「生涯学習」の考え方を進めていく「生涯学習の振興のための施策の推進体制の整備に関する法律」が制定され、従来の社会教育の分野に加えて、学校教育や民間の生涯教育活動などとの連携を視野においた「生涯学習」の必要性が叫ばれはじめたのです。

 また、1995年には、いわゆる「音楽教育振興法」が制定され、音楽教育に対する国や地方自治体の責務が唱えられることとなりました。ただ、「生涯学習の振興のための施策の推進体制の整備に関する法律」は、教育関係諸法規との整合性がとれていない(※脚注)ほか、そもそもの「生涯学習」という言葉の定義がされておらず、さらに、「音楽教育振興法」の国や地方自治体の責務とは、「音楽教育の振興に努める」程度の規定であり、実際には各公共団体の裁量によるところが大きいため、そう手放しでは喜べないのですが、公のこれら学習活動に関わる積極的な(指導・命令などの介入ではなく)援助を求めたこれら法律が整備されたことは、少なくとも私達の活動にとっては、大きな「初めの一歩」ではあります。

 ただ、考えなければならないのは、行政などの公の部分で「生涯学習」を奨励しているからといって、その奨励が「資金的な援助」であり、公が「なんでも援助してくれる」と思ってしまうことの危険性です。公の機関にパイプをもって、必要なときにアドバイスを受けることが出来るような体制は必要ですが、自分たちの趣味に税金を使わせるのが当たり前と思ってしまったとしたら、大間違いです。

一人ひとりが自覚と節度をもって活動する必要性が、今、求められています。

(※脚注)「生涯学習」については、その後、2006(平成18)年に教育基本法が改正され、「生涯学習の理念」が定義づけられました。

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